授業アンケートの報告会を継続して行っている学校ですので、今回はハードルを上げた取り組みでした。
1.学力診断テストとアンケート結果の関連性の検証
まず、学力診断テストとアンケート結果の関連性の検証を行いました。
その結果、数学では関連が見られました。学力向上実感が学年を経るごとに上がっていたのですが、これに伴い実際の学力も上がっていたのです。つまり、アンケートで学力の向上を実感しているという結果と、実際の偏差値の連動が見られました。
英語では、低学力層ではアンケート結果と診断テストが関連していましたが、高学力層では関連があまり見られませんでした。
低学力層にフォーカスした授業づくりは、実際の学力向上にもつながっているけれども、高学力層についてはうまく連動していないのです。
より詳しく言えば、実際の学力は上がっているけれども、学力向上実感は下がっていたのです。
このズレは発見でした。
なぜなら、もしアンケートだけを見ていたら、「この学年の学力は下がっているのでは」という結論になるかもしれません。一方で、学力診断テストだけを見ていたら、「この学年の学力は上がっている」と判断してしまい、目の前の生徒が「学力が上がっていないのでは」という気持ちを抱えていることに気づかずにいた可能性もあったからです。
アンケートと学力診断テストを合わせて分析することで、バランスのとれた視点で生徒の状況を捉えることができました。また、高学力層にも焦点を当てた授業づくり、という課題を設定することもできました。
また、英国数とも予習復習と学力診断テストの結果がうまく連動していないという発見もありました。
ここから、予習復習の量と質を詳しく検証していく必要がある、という課題を導くことができました。
2.授業実践の振り返り
次に、授業実践の振り返りを行っていただきました。
前段階として、夏の研修会で前期の授業を単元ごとに振り返り、後期に向けて意識すべき単元を設定していただいていました。
その単元について、ある一コマの授業を思い出して頂き、特に生徒とのやりとりを中心に書き出して頂きました。
会話を書きだして頂いた後、その横に「この会話の際、どのようなことを考えていたか」を書いていただきました。
お気づきの方もいらっしゃると思いますが、アージリスとショーンの「組織学習」(Chris Schon, David A. Argyris,1995,Organizational Learning II: Theory, Method, and Practice)で使われていた手法です。
実践(practice)の中で無意識的に使っている「わざ」を意識化・言語化して、振り返りを行い、自分が当たり前に思っていたことを捉えなおし、より良い実践を検討する(ダブルループ・ラーニング)ためのワークです。
年配の先生であればされている方もいらっしゃると思いますが、「授業実践記録」を日々つけて振り返りを行い、授業の腕を磨くという授業研究と同じ手法です。
はじめての試みでしたが、みなさんは予想を上回るペースでシートを書き上げ、そのシートを元に議論を重ねていらっしゃいました。ダルビッシュ投手やイチロー選手は、自分の投げた球、打った球を一球一球鮮明に覚えていますが、こうした実践の記憶力もまたプロフェッショナルの要件なのかもしれません。
中には生徒のことがあまり書かれていないシートもありました。もちろん、実際の授業ではうまく対応されていたり、書くまでもないと思っていらっしゃたり、先生の熱意ある授業に生徒が真剣についていってる、ということもあると思います。
ただ、生徒の反応がよく書かれたシートからは、「この先生は授業中よく生徒のことを見ているのだな」と感じました。野球と同じで、投げられた球(生徒の反応)に瞬間的にどう対応するかが授業で求められるのかもしれません。もちろん、豪腕投手なので(説明がうまいので)、いつも三振(生徒が参ってしまう)ということもあるかもしれませんが。
このような授業の振り返りシートを、すでに作成されているシラバスの対応する単元に紐付け、シラバスの振り返り・肉付けを行うというところまでしていただきました。
今後は単元ごとの研究授業の計画や結果などもシラバスに紐づくとよいのかもしれません。
3.生徒向けスタディ・ガイドの作成
ワークの最後では、次年度のシラバスをもとに、生徒向けのスタディ・ガイドを作って頂きました。
シラバスは外部向けということもあり、表現がとても固いです。なので、4月の1回目の授業で生徒に配布するイメージで、「先生からのメッセージ」「この科目のおすすめ学習方法」など、先生のキャラクターがすこし出るような表現で、しかもこの科目のエッセンスを捉えているようなスタディ・ガイドを作成いただきました。最後に、そのスタディ・ガイドの通りに生徒が学習したと想定した授業アンケート結果の予測をしていただき、次年度に向けた話し合いを行っていただきました。
このようによく考え、話し合っていただいた3時間半ではなかったかな、と思います。
欲を言えば、定期的に授業観察を行い、先生の行動と生徒の行動の双方を踏まえた観察データに基づき、授業研究会を開いていただくと良いかなと思います。
コマ数の関係上、物理的に観察することが難しいと思います。以前であればビデオを使った授業研究もありましたが、最近伺った中学校ではipadの録画機能を使って手軽に撮影されている事例もありました。より授業研究のしやすい環境になっているのかもしれません。